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喪服の着物、どう選ぶのが正解?基本マナーから正しい着付けまで徹底解説

突然の訃報に際し、どのような装いで参列すべきか悩むことはありませんか。
喪服としての着物は、洋装とは異なる格式や決まりごとがあり、立場や場面に応じた正しい知識が求められます。しかし、いざ準備しようとすると、どんな種類を選べば良いのか、帯や小物はどう合わせるのか、着付けはどうすれば良いのかなど、疑問や不安を感じる方も少なくないようです。
この記事では、喪服としての着物の基本的なマナーから、立場に応じた選び方、そして初心者でも分かりやすい着付けのポイントまで、丁寧に解説していきます。
喪服の着物とは?知っておきたい基本知識
弔事の席で着用される「喪服」。洋装が一般的になった現代でも、着物は故人への深い敬意と哀悼の意を示すための、最も格式高い装いとされています。
しかし、普段着物を着慣れていないと、いざという時に戸惑うことも多いかもしれません。まずは、喪服としての着物が持つ意味合いや、洋装との違いについて理解を深めましょう。
喪服における着物の役割と意味
喪服としての着物は、単なる衣装ではなく、故人を偲び、遺族に寄り添う気持ちを表すための大切な役割を担っています。
黒という色には「悲しみに深く染まる」という意味が込められ、厳粛な場にふさわしい、控えめで清浄な姿を示すことが求められます。古くからのしきたりやマナーに則って正しく着用することで、故人への敬意を最大限に表し、場の雰囲気を乱すことなく、厳かな儀式に臨むことができます。
【関連記事】着物の種類を解説!着用シーンや季節別の着物の種類について
洋装(ブラックフォーマル)とは違う、着物ならではの格式
洋装の喪服にも格式はありますが、着物の喪服はより細かく「格」が定められています。
立場や場面によって着用すべき着物の種類、紋の数、帯や小物の組み合わせが決まっており、それを間違えることは失礼にあたる可能性もあります。
最も格式が高いのは「正喪服」と呼ばれる染め抜き五つ紋付の黒無地で、主に喪主や近親者が着用します。次に「準喪服」、そして「略喪服」と続き、立場や弔事の種類(通夜、葬儀・告別式、法事など)によって使い分けられます。この「格」を理解することが、喪服の着物を選ぶ上で最も重要なポイントとなります。
【立場別】喪服の着物の「格」と種類を知ろう
喪服の着物は、故人との関係性や参列する儀式の種類によって、ふさわしい「格」が異なります。ここでは、「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3つの格式について、それぞれの特徴と着用シーン、合わせる小物を解説します。
最も格式高い「正喪服」:染め抜き五つ紋付黒無地
正喪服は、喪服の中で最も格式が高い装いです。黒一色で染められた無地の着物に、日向紋(ひなたもん)と呼ばれる白く染め抜かれた家紋が背中、両胸、両後ろ袖の計五か所に入ります。生地は羽二重などの光沢のないものが正式とされています。
着用する主な立場(喪主、三親等までの親族など)
正喪服は、主に喪主や施主、そして故人の配偶者、親、子、兄弟姉妹といった三親等までの近親者が、葬儀・告別式で着用します。お通夜では、かつては「急いで駆け付けた」という意味合いから準喪服や略喪服が良いとされていましたが、近年では準備ができる場合は正喪服を着用することも増えているようです。
合わせる帯や小物
- 帯: 黒共帯(くろともおび)と呼ばれる、黒無地の名古屋帯または袋帯を合わせます。織り方が「平織り」のものが正式です。
- 帯締め・帯揚げ: 光沢のない黒無地のものを選びます。
- 長襦袢・半衿: 白無地のもの。絽(ろ)や麻など、季節に合わせた素材を選びます。
- 草履・バッグ: 光沢のない黒の布製が基本です。
準喪服(一般的な喪服):一つ紋または三つ紋が入ったもの
準喪服は、正喪服に次ぐ格式の装いです。一般的に「喪服」というと、この準喪服を指すことが多いでしょう。
黒以外でも、グレー、紫、紺などの寒色系の無地の着物に、染め抜きの一つ紋または三つ紋が入ったものが用いられます。黒無地の一つ紋や三つ紋も準喪服に含まれます。
着用シーン(通夜、一般参列、法事など)
準喪服は、お通夜、葬儀・告別式への一般参列、三回忌までの法事などで幅広く着用できます。親族であっても、遠方からの参列や、正喪服の準備が難しい場合などは、準喪服を着用することが一般的です。
合わせる帯や小物(黒共帯、色喪帯)
- 帯: 黒共帯、またはグレーや紫などの色喪帯(いろもたい)を合わせます。色喪帯は、黒共帯よりもやや格式が下がります。
- 帯締め・帯揚げ: 黒、または帯の色に合わせてグレーや紫などの寒色系のものを選びます。
- 長襦袢・半衿: 白無地のもの。
- 草履・バッグ: 光沢のない黒の布製が基本ですが、控えめなデザインであればグレーなどの寒色系も許容される場合があります。
略喪服(略式の喪服):無紋の色無地や江戸小紋など
略喪服は、最も格式を抑えた喪服です。紋のない寒色系の色無地や、江戸小紋(鮫小紋、行儀、角通しなど)といった控えめな柄の着物がこれにあたります。
着用シーン(急な弔問、三回忌以降の法事など)
お通夜前の急な弔問や、三回忌以降の法事、故人を偲ぶ会などで着用されます。親族以外の一般参列者がお通夜に参列する場合も、略喪服が適しているとされることがあります。
合わせる帯や小物
- 帯: 黒共帯または色喪帯を合わせます。略喪服の場合は、光沢の少ない地味な色柄の名古屋帯なども許容されることがあります。
- 帯締め・帯揚げ: 黒、またはグレー、紫などの寒色系で控えめなものを選びます。
- 長襦袢・半衿: 白無地のもの。
- 草履・バッグ: 黒または地味な色合いの布製のものを選びます。
喪主・親族・一般参列者での選び方の違いまとめ
基本的には、故人との関係性が近いほど格式の高い喪服を選びます。
| 立場 | 着用シーンと目安 |
|---|---|
| 喪主・三親等までの親族 | 葬儀・告別式では正喪服(黒無地五つ紋付)が最も正式。 お通夜では準喪服でも良いとされる場合も。 |
| それ以外の親族・一般参列者 | お通夜、葬儀・告別式ともに準喪服(色無地一つ紋・三つ紋など)が一般的。 急な弔問や三回忌以降の法事では略喪服でも可。 |
ただし、地域の慣習や家の考え方によって異なる場合もあるため、迷った場合は親族や年長者に相談するのが安心です。
失敗しない!喪服の着物を選ぶ際の基本マナー
喪服の着物を選ぶ際には、格式だけでなく、季節感や小物の合わせ方など、いくつか押さえておきたい基本的なマナーがあります。故人や遺族に対して失礼のないよう、細部まで気を配りましょう。
季節に合わせた生地の選び方(袷・単衣・絽/紗)
着物には季節に応じた仕立ての違いがあります。喪服も同様に、季節に合わせて適切なものを選ぶのがマナーです。
- 袷(あわせ): 10月〜翌年5月頃に着用する裏地付きの着物です。最も一般的な仕立てで、幅広い季節に対応します。
- 単衣(ひとえ): 6月と9月に着用する裏地のない着物です。初夏や初秋のやや暑さを感じる時期に適しています。
- 絽(ろ)・紗(しゃ): 7月〜8月の盛夏に着用する薄物(うすもの)と呼ばれる透け感のある生地の着物です。絽の方がやや格式が高いとされています。
お通夜や葬儀は季節を選べませんが、法事などで事前に日程がわかっている場合は、その時期に合わせた着物を用意しましょう。
帯の種類と選び方(黒共帯・色喪帯)
喪服に合わせる帯は、黒一色の「黒共帯」が基本です。素材は、着物と同様に光沢のないものが正式とされ、夏用には絽や紗の黒共帯を用います。
準喪服や略喪服の場合は、黒共帯の代わりにグレーや紫、紺などの寒色系の「色喪帯」を合わせることもできます。ただし、金糸や銀糸が入ったもの、華やかな柄のものは避け、あくまで控えめな印象のものを選びましょう。
帯の結び方(お太鼓結びが基本)
弔事の際の帯結びは、「不幸が重なる」ことを連想させないよう、結び目が重ならない「一重太鼓(いちじゅうだいこ)」または「平らな結び」が基本です。喜びを表す「二重太鼓(にじゅうだいこ)」や、華やかな「変わり結び」は避けなければなりません。
名古屋帯の場合は通常のお太鼓結びで問題ありません。袋帯の場合は、不幸が重ならないように、お太鼓部分が二重にならない結び方を選びます。
長襦袢・半衿は「白」を選ぶ
着物の下に着る長襦袢と、長襦袢の衿元につける半衿は、必ず「白」を選びます。素材は正絹が最も格が高いですが、洗濯しやすいポリエステル製などでも問題ありません。夏場は絽や麻などの涼しい素材を選びましょう。色物や柄物の半衿は弔事にはふさわしくありません。
帯締め・帯揚げは「黒」で統一
帯の中央で結ぶ「帯締め」と、帯の上辺を飾る「帯揚げ」は、原則として「黒」の無地のものを使用します。房のついた帯締めの場合、房は下向きになるように結びます。準喪服や略喪服で色喪帯を合わせる場合は、帯の色に合わせてグレーや紫などの寒色系で揃えることもあります。
草履・バッグなど小物の選び方(布製の黒が基本)
草履とバッグは、光沢のない黒の布製が最も正式とされています。エナメル素材や革製品、爬虫類系の素材、金具が目立つデザインは避けましょう。
草履の鼻緒も黒を選びます。バッグは小ぶりで、必要最低限のものが入る程度の大きさが適しています。数珠は宗派に合わせたものを用意し、袱紗は紫や紺、グレーなどの寒色系のものを用います。
家紋の重要性と確認事項
喪服の格式を決定づける上で重要なのが「家紋」です。正式な喪服には、白く染め抜かれた「染め抜き紋」を入れます。最も格式が高い正喪服は五つ紋、準喪服は三つ紋または一つ紋となります。略喪服には紋は入れません。
入れる紋の種類(実家の紋?婚家の紋?)
既婚女性の場合、どちらの家の紋を入れるべきか迷うことがあります。一般的には、実家の紋である「女紋」を入れることが多いようです。これは、嫁いだ後も実家との繋がりを示す意味合いがあるとされています。
しかし、地域や家の考え方によっては婚家の紋を入れる場合もありますので、事前に家族や親族に確認するのが良いでしょう。未婚女性の場合は、実家の紋を入れます。
【初心者向け】喪服の着付けで準備するものと手順
いざ喪服の着物を着るとなると、何が必要で、どう着付ければ良いのか不安になる方もいるでしょう。ここでは、着付けに必要なものと、基本的な手順、弔事ならではの注意点を解説します。
着付けに必要なものチェックリスト
喪服の着付けには、着物と帯以外にも様々な小物が必要です。慌てないように、事前にリストで確認しておきましょう。
- 着物: 季節と格に合ったもの
- 帯: 黒共帯または色喪帯
- 長襦袢: 白無地(半衿付き)
- 肌着: 肌襦袢、裾除けまたはワンピースタイプの和装スリップ
- 足袋: 白足袋(こはぜ付きのもの)
- 腰紐: 3〜5本程度
- 伊達締め: 2本
- 帯板: 1枚
- 帯枕: 1つ(お太鼓結び用)
- 衿芯: 1本(長襦袢の衿に入れる)
- コーリンベルト: 1本(あれば便利)
- タオル: 2〜3枚(補正用)
- 草履、バッグ、数珠、袱紗
基本的な着付けの手順(ポイント解説)
基本的な着付けの流れは通常の着物と同じですが、喪服の場合は特に「きちんと感」と「控えめさ」を意識することが大切です。
- 準備: 足袋を履き、肌着、長襦袢を着ます。長襦袢に半衿と衿芯が入っているか確認しましょう。
- 補正: 体型に合わせてタオルなどで体の凹凸を補正します。寸胴体型に近づけることで、着崩れを防ぎ、美しく着こなせます。
- 着物を羽織る: 着物を羽織り、衿先を持ち、背中心を合わせます。
- 裾合わせ: 下前の裾を持ち上げ、裾が床すれすれになるように長さを決めます(裾つぼまり)。
- 上前を合わせる: 上前(左側)を右側にかぶせ、裾線を決めます。
- 腰紐を結ぶ: 決めた位置で腰紐をしっかりと結びます。
- おはしょりを作る: 腰紐の上から出ている着物の布(おはしょり)を整えます。
- 衿元を合わせる: 喉のくぼみが見える程度に衿を合わせます。弔事では詰めすぎず、開きすぎず、上品に。
- 伊達締めを締める: 胸紐またはコーリンベルトで衿元を固定した後、伊達締めで押さえます。
- 帯を結ぶ: 帯板を入れ、帯枕を使ってお太鼓結びなど、ふさわしい結び方で帯を結びます。帯締め、帯揚げを整えます。
- 最終チェック: 全体の着姿を確認し、シワやたるみがないか、着崩れていないかをチェックします。
補正の重要性
着物は直線的な布を体に巻き付けて着るため、体の凹凸が少ない方が美しく着こなせます。特にウエスト周りや胸元、ヒップの上などをタオルで補正することで、帯が安定し、着崩れを防ぐ効果があります。
衣紋の抜き加減
衣紋(えもん)とは、首の後ろの衿の部分のことです。弔事では、衣紋をあまり大きく抜かず、首筋に沿わせるように控えめに着付けます。こぶし一つ分も抜かず、指3本分程度が目安です。
弔事における着付けの注意点
喪服の着付けには、お祝いの席とは異なる、弔事ならではの注意点があります。
衿合わせは右前(通常通り)
着物の衿合わせは、男女問わず必ず「右前(右の身頃が下、左の身頃が上)」です。これは通常の着方と同じで、「左前」は亡くなった方に着せる経帷子(きょうかたびら)の着せ方ですので、絶対に間違えないようにしましょう。
帯の位置はやや低めに
お祝いの席では帯をやや高めに結びますが、弔事では帯の位置を通常よりも少し低めに結びます。「悲しみに沈む」という意味合いを表すとされています。
「不幸が重なる」ことを避ける帯結び
前述の通り、帯結びは結び目が重ならない「一重太鼓」などが基本です。不幸が繰り返されないように、という想いが込められています。
まとめ:故人を偲ぶ気持ちを込めて、正しい喪服の着物を
喪服の着物は、故人への敬意と弔意を示すための大切な装いです。格式やマナーを守り、立場や場面にふさわしい着物を選ぶことが重要です。基本的な知識を身につけ、必要なものを事前に準備しておけば、いざという時にも落ち着いて対応できるでしょう。
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