i KIMONO いきもの

記事公開日:

【きもの文様シリーズ】鱗文

様々な着物の文様を求めて走り回っている「きもの文様 千文家」山下啓介です。

私が出会った文様と、関連する豆知識をご紹介します。

今回の文様は『鱗文(うろこもん)』


「鱗文」とは、三角形を互い違いに並べたとてもシンプルな文様です。

この連続文様は魚類や蛇の鱗に見立て、「鱗文」「鱗文様」と呼ばれており、日本だけでなく世界各地でも古くから見られる伝統文様です。

この文様に「鱗文」という名前がついたのは鎌倉時代とされています。

魚類や蛇の鱗に見立て、呪い、魔除けの力を持つとされた事から武具や戦陣の衣服や紋章に使用されました。

 

こちらは鎌倉幕府の北条時政の旗印です。

三角形を三つ重ねた『三鱗』と呼ばれるもので、鱗文と似ています。




室町時代から、鱗文は衣装の文様に使われはじめます。

中国から渡来した名物裂の中にこの文様があり、そこから武家の陣羽織や能装束に取り上げられて広まったようです。




また、この鱗のような形から能や歌舞伎において鬼女や蛇の化身の衣装に使われ、女の執念を象徴する図柄として有名になりました。

江戸時代になると、鱗文は蛇や蝶を連想させる形として「脱皮を表し、厄を落として再生する」と厄除けの文様として使われるようになります。

 

現在の鱗文は、さまざまにアレンジされた「三角形を用いた柄の総称」になっており、きものや帯、和装小物などにも幅広く用いられています。

三角形の中に文様を入れたもの、部分的に三角形を強調した意匠など、多彩でおしゃれな鱗文様が登場しています。



鱗で身を守る、固めるとの縁起にちなんで「女性の厄除け、魔除け」の図柄として鱗文様の長襦袢を身に付ける風習もあります。

シンプルでおしゃれな文様というだけでなく、長い歴史の中で愛され続けてきたお守り文様として身につけるのも素敵ですね。

 

記事提供:きもの文様 千文家_山下啓介

https://ameblo.jp/bonbonkeitan/entry-12268918324.html