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【きもの文様シリーズ】藤文

様々な着物の文様を求めて走り回っている「きもの文様 千文家」山下啓介です。
私が出会った文様と、関連する豆知識をご紹介します。
今回のきもの文様は『藤文』
藤文(ふじもん)
藤原氏一門の繁栄がもたらした文様
藤文は藤の花や葉、それに蔓を文様化したものです。
藤は古くから日本に自生する蔓性の植物で、華麗な房状の花が観賞用として親しまれていました。
四、五月ごろ、白や紫の見事な花房を下げる藤は、古くからその美しさをうたわれ、わざわざ藤見の会なども催されてきました。
しかし、藤そのものに対する捉え方は、大きく分かれていたようです。
藤の垂れ下がる花のかたちが『成り下がる』を連想させるとして、公家社会では、とくに屋敷内に植えるのを避ける風潮があったとか。
その一方、華麗な房状の花が稲穂に似ていることから、豊作を願う花として珍重され、不死にも通じるとされました。
藤の淡紫色は松の緑と共に高貴とされ、平安時代の『枕草子』に“めでたきもの”として「色あひふかく花ぶさ長く咲きたる藤の花の松にかかりたる」と記されています。
このように房状に垂れ下がる藤の花の高貴な色は古くから愛されており、平安時代後期、藤原氏全盛のときに文様として完成されて有職文様のひとつとなりました。
藤立涌、藤の丸、巴藤などがあり、藤を使った家紋も50種類以上あります。
単独で用いると、晩春、初夏の季節感を感じられる装いになりますよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
記事提供:きもの文様 千文家_山下啓介