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振袖のたたみ方から収納まで簡単な手順を解説!

成人式や卒業式などで華やかに袖を通した振袖を、次に着る時まで美しく保つためには、正しいお手入れと保管が欠かせません。中でも、「振袖のたたみ方」は、着物を守る上で最も重要なステップの一つです。

間違ったたたみ方でしまうと、大切な着物に深いシワやカビの原因を作ってしまうこともあります。しかし、ポイントさえ押さえれば、誰でも自宅で簡単に、そして美しくたたむことができます。

この記事では、初めての方でも迷わない振袖のたたみ方の簡単な基本手順から、長期間美しい状態を保つための正しい収納方法までを、わかりやすく解説していきます。

振袖をたたむ際に準備すること

大切な振袖をカビやシミから守り、美しい状態を保つためには、たたむ前の準備と心構えが重要です。このひと手間が、着物の寿命を大きく左右します。

シミや汚れのチェック

着用直後の振袖は、すぐにたたむのではなく、まず風通しの良い日陰で広げ、熱と湿気を取ります。その後、以下の箇所を徹底的にチェックしてください。

  • 衿(えり)と衿元
    ファンデーションや皮脂、汗のシミが最もできやすい場所です。特に着用中は隠れていた内側の部分も、照明の下で確認が必要です。
  • 袖口(そでぐち)と裾(すそ)
    飲食や泥はね、雨染みなどがついていないか、目線の高さを変えて確認します。

目に見えるシミや汚れを発見したら、絶対に自分で処置しないことです。水をつけたり、こすったりすると、シミが繊維の奥深くまで浸透し、かえって落ちにくくなります。放置するとシミが酸化して黄ばみ(黄変)として浮き出てくるため、発見次第、専門のクリーニング業者へ持ち込むことが大切です。

最適なたたみ場所と用意するもの

振袖をたたむ際は、広くて清潔な場所で行うのが鉄則です。

  • 場所の選定
    振袖は袖が長いため、全体を広げられる畳の部屋や、テーブルの上に清潔な大判の布を敷くのが最適です。ホコリが舞いやすいカーペットの上や、湿気の多い場所は避けましょう。
  • 用意するもの
    振袖の下に敷く清潔な大判の布(シーツや風呂敷)、仕上げに使うたとう紙(文庫紙)があれば完璧です。

振袖をたたむ際のポイント

着物のたたみ方は、洋服とは異なり、「縫い目と折り目を一致させる」ことが基本です。

  • 縫い目を基準にする
    脇の縫い目、肩の縫い目(肩山線)など、着物に元々ある「筋」に沿って折ります。この筋以外の場所に折り目をつけると、着物が傷んだり、深いシワの原因になったりします。
  • 優しく空気を抜く
    力任せに「ぎゅうぎゅう」と押さえつけず、手のひら全体を使い、布の繊維の間にある空気を「フワッと」抜き取るように優しく撫でます。これにより、余計なシワをつけずに済みます。

誰でも簡単にできる「振袖のたたみ方」(本だたみ)

振袖のたたみ方の基本となるのが「本だたみ」です。手順はシンプルで、着物の構造を理解すれば誰でもスムーズにたたむことができます。

「本だたみ」とは?振袖の基本となるたたみ方

本だたみは、着物を広げた時にできるシワを最小限に抑え、縦方向の折り目だけでコンパクトにまとめるたたみ方です。着物を長期間、最も良い状態で保管するために最も適しています。

【手順1】衿(えり)・衽(おくみ)の線に合わせて身頃を重ねる

振袖を裏地が見えるように広げます。

右側(着る人から見て外側)の身頃の脇線と裾の線をまっすぐに整えます。左身頃を、右身頃の幅に合わせて重ねます。この時、左右の衿が一直線に重なるように調整します。脇の縫い目を基準に内側に折り込むイメージを持つと簡単です。衿や衽(おくみ)線(衿から裾へ斜めに伸びる線)の縫い目にぴったり合わせて折ると、身頃の幅が綺麗に二つ折りになります。

【手順2】袖を山なりに折り、身頃に沿わせる

振袖の長い袖の扱いが、たたみ方の肝となります。

上になっている袖(右袖)の袖山(そでやま)線(肩の上の縫い目)を基準に、袖を山折りに折り返します。折り返した袖を、袖付け線(身頃と袖を繋いでいる縦の縫い目)に合わせて身頃の上にぴたりと重ねます。

振袖の袖先、振り(ふり)の部分が身頃からはみ出る場合は、袖口側へ軽くたたみます。この部分は無理に折り込まず、フワッと折り目をつける程度で構いません。

振袖を裏返し、下になっていた袖も同じ手順でたたみます。これにより、振袖は細長い長方形の状態になります。

【手順3】最終的にコンパクトにたたむ手順

裾(すそ)の部分を持ち上げ、着物の中央付近にある横の折り目(着物によっては存在しないこともあるが、大体は身八つ口の下あたり)を基準に、裾から肩に向かって半分に折ります。

最後に、収納するタンスやたとう紙のサイズに合わせて、全体をさらに半分、または三つ折りにします。この時も、強く押さえつけずに優しく行います。

振袖と一緒に収納!長襦袢・袋帯のたたみ方

振袖だけでなく、長襦袢や帯、小物も正しくたたみ、収納することが大切です。

長襦袢の簡単なたたみ方(衿の形を崩さないコツ)

長襦袢は振袖よりも薄手でシワになりやすいため、優しく丁寧にたたむよう心がけます。

長襦袢は「襦袢たたみ」が基本です。縫い目を基準に身頃を重ね、袖を重ねていきます。半衿(はんえり)を付けたまま収納する場合は、衿元を強く押し付けないことが重要です。次に着用するときの着付けの美しさに影響するため、やさしく扱いましょう。

袋帯の簡単なたたみ方(二つ折り・四つ折りの方法)

金銀糸が使われていることが多い袋帯は、折りジワがつくと生地を傷める原因になりかねません。

帯の幅(約30cm)を半分に折ります。この時、柄を内側にすると、外部からの摩擦で柄が傷むのを防げます。たとう紙のサイズに合わせて、長手方向を三つ折りや四つ折りにします。

強く折り目をつけず、ふんわりとたたみます。帯が呼吸できるように空気を残すことが、金銀糸の劣化を防ぐポイントです。

帯締め・帯揚げ・伊達衿など小物の保管方法

小物類も、簡単に扱えるからといって乱雑にしまうのは避けるべきです。

  • 帯締め
    房(ふさ)の部分は、和紙や薄紙で包み、絡まないように保護します。本体は軽く丸めるか、ゆるく三つ折りにして小さな箱に収納します。
  • 帯揚げ
    シワを防ぐため、広げたまま、たとう紙に入るサイズにゆるくたたむか、他の小物とまとめて小さな風呂敷に包みます。
  • 伊達衿(重ね衿)
    シワにならないよう、長襦袢の衿に挟んだ状態か、広げたまま収納するのが最適です。

振袖の長期収納・保管のコツ

振袖のたたみ方をマスターしたら、いよいよ長期収納の段階です。適切な保管をすることで、数十年後も美しさを保つことが可能になります。

振袖の収納に適した環境(場所選びと温度・湿度)

着物にとって最大の脅威は「湿気」「カビ」「虫食い」です。

湿気の吸収・放湿性に優れた桐ダンスが最も適しています。クローゼットに収納する場合は、床から離して置き、壁から少し隙間を空けて通気性を確保します。プラスチックケースに収納する場合は、中に湿気がこもりやすいため、定期的なケースの開放と乾燥剤の交換が欠かせません。

着物の保管に最適なのは、温度15~20℃、湿度45~60%とされます。極端な高温多湿や、結露しやすい窓際などは避けてください。

「たとう紙(文庫紙)」を使った正しい収納方法

たとう紙は、振袖を湿気やホコリから守る「包み」です。通気性があり、適度な湿気を吸う和紙でできているため、たたんだ着物を必ずこのたとう紙に包んで収納します。

長年使っていると、たとう紙自体が湿気を吸い込み、シミや茶色の変色が見られます。これは湿気を溜め込んでいる証拠のため、古いものは新しいものに交換が必要です。

定期的なお手入れ(虫干し)の時期と注意点

大切な着物を守るために、ぜひ習慣にしていただきたいのが「虫干し(陰干し)」です。

  • 理想的な時期
    空気が乾燥している秋(10月頃)と冬(2月頃)が最適です。最低でも年に1回は行うようにします。
  • 虫干しの方法
    直射日光を避け、風通しの良い日陰を選びます。着物ハンガーにかけて、半日から丸一日程度干します。

ただ干すだけでなく、この機会に着物全体を広げて「カビ」「シミ」「虫食い」がないか、改めて最終チェックを行います。

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着物ってどうやって保管すればいいの?正しい保管方法

まとめ

この記事では、「本だたみ」の手順から、長襦袢・帯のたたみ方、そして大切な着物を守る長期収納のコツまでを解説しました。

高価で思い入れのある振袖を美しく保つ最大の秘訣は、たたみ方や収納方法といった「日常の丁寧なお手入れ」にあります。

しかし、「もしシワをつけたらどうしよう」「シミを自分で見つけられない」といった不安や、プロのお手入れが必要だと感じた場合は、無理をせず専門家に頼るという賢明な選択肢も持っておくことが大切です。

「鈴花」では、振袖の販売・レンタルだけでなく、着用後のクリーニング、保管に関するご相談も承っております。振袖の保管に不安がある場合は、プロによる着物のお手入れ・収納サポートサービスをぜひご利用ください。大切な振袖を、次世代まで美しく受け継いでいくために、私たちがお手伝いをさせていただきます。

詳しくは、公式サイトをご覧ください。
https://www.suzuhana.co.jp/

ライター紹介

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中村笑子

京都で着付け講師をしている中村笑子です。
Pointを分かりやすく解説しますので、ぜひ皆さんの着付けの参考にしてください。

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