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着物の下には何を着る?肌着・長襦袢の基本と選び方

着物を美しく着こなしたいけれど、「下には何を着ればいいの?」「洋服のインナーじゃダメなの?」と疑問に思うことはありませんか。
実は、着物を着る際に適切な肌着や長襦袢を身につけることは、着崩れを防ぎ、美しい着姿を保つために非常に重要です。また、汗などの汚れから大切な着物を守り、快適な着心地を保つ役割も担っています。
この記事では、着物の下に着る基本的なアイテムの種類とその役割、そして素材や季節に合わせた選び方のポイントを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
なぜ必要?着物の下着(肌着・長襦袢)の役割
洋服を着る際にはあまり意識しないかもしれませんが、着物を着る上で肌着や長襦袢は非常に重要な役割を果たしています。「着物一枚だけじゃだめなの?」と思われるかもしれませんが、適切な下着を身につけることで、着物を美しく快適に着こなすことができるのです。具体的にどのような役割があるのか見ていきましょう。
1. 汗や皮脂汚れから着物を守る
着物は洋服のように頻繁に洗濯することができません。特に正絹などのデリケートな素材は、水洗いが難しく、クリーニングにも費用と時間がかかります。肌着や長襦袢は、肌に直接触れることで汗や皮脂を吸収し、大切な着物に汚れが付着するのを防ぐ重要な役割を担っています。下着を着用することで、着物を長持ちさせることができるのです。
2. 着崩れを防ぎ、着付けを安定させる
着物は、紐や帯を使って体に固定していきます。肌着や長襦袢を着用することで、着物の生地との摩擦が適度に生まれ、滑りにくくなります。このため、着付けた形が崩れにくくなり、長時間美しい着姿を保つことができます。特に、歩いたり座ったりといった動作を繰り返す中で、着崩れを防ぐ効果は大きいといえるでしょう。
3. 下着のラインや体の凹凸を整え、美しいシルエットを作る
洋服用の下着、特にブラジャーなどは、ワイヤーやカップによって体のラインを強調するように作られています。しかし、着物は直線的な布で体を包み込むため、体の凹凸が少ない方が美しいシルエットになります。
和装用の肌着やブラジャーは、胸元をなだらかに整えたり、ウエスト周りのくびれを補正したりすることで、着物を着たときにシワができにくく、すっきりとした理想的な筒型(寸胴)の体型に近づける役割があります。
4. 透けを防ぐ
特に夏物の着物(絽や紗など)や、淡い色の着物は生地が薄く、光にかざすと透けてしまうことがあります。肌着や長襦袢を着用することで、体のラインや下着の色が透けるのを防ぎ、安心して着物を着ることができます。
5. 保温や吸汗性を高め、着心地を良くする
肌着は、季節に合わせて素材を選ぶことで、体温調節の役割も果たします。冬場は保温性の高い素材を選ぶことで暖かく過ごせ、夏場は吸汗性・速乾性に優れた素材を選ぶことで、汗による不快感を軽減し、快適な着心地を保つことができます。
これだけは揃えたい!着物の下に着る基本アイテム
着物の下に着るものにはいくつか種類があります。どれも大切な役割を持っていますが、ここでは特に基本的なアイテムをご紹介します。
肌着(直接肌に触れるもの)
洋服でいうインナーにあたるもので、汗取りや着物の汚れ防止のために直接肌の上に着用します。
肌襦袢:上半身用の肌着
上半身に着る肌着です。汗を吸い取り、着物や長襦袢に汗ジミが付くのを防ぎます。衿の形が着物から見えないように工夫されており、素材は汗を吸いやすい綿(ガーゼなど)が一般的です。筒袖タイプと、袖が付いているタイプがあります。
裾除け:下半身用の肌着
腰から下に巻き付けて着用する、スカートのような形の肌着です。足さばきを良くし、静電気を防いだり、裾が足にまとわりつくのを防いだりする役割があります。腰布部分は汗を吸いやすい綿、裾部分は滑りの良いキュプラなどの素材で作られていることが多いです。
和装スリップ(ワンピースタイプ):肌襦袢と裾除けが一体になったもの
肌襦袢と裾除けが一つになった、ワンピース型の肌着です。着付けの手間が少なく、お腹周りがすっきりするのがメリットです。初心者の方にも扱いやすいアイテムです。様々な素材やデザインのものがあります。
和装ブラジャー:胸元の補正と着姿を美しく
着物を美しく着るためには、胸のふくらみをなだらかに整えることがポイントです。和装ブラジャーは、洋装ブラジャーのように胸を寄せて上げるのではなく、胸全体を優しく押さえて高さを抑え、鳩胸のような平らなラインを作ることを目的としています。
このため、帯の上に胸が乗ってしまうのを防ぎ、すっきりとした美しい着姿を実現します。伸縮性のある素材でできており、ワイヤーが入っていないものが一般的です。
長襦袢:肌着の上、着物の直前に着るもの
肌着の上、着物のすぐ下に着る、着物と同じような形のものです。着物姿の土台となる重要なアイテムです。
着物の滑りを良くし、着やすくする
長襦袢は、肌着と着物の間に着ることで、着物の滑りを良くし、着付けをしやすくする役割があります。また、歩いたり動いたりした際の着物と肌着の摩擦を軽減し、着崩れを防ぐ効果もあります。
着物の衿元や袖口から見せるおしゃれも
長襦袢の衿には「半衿」を縫い付けて着用します。着物の衿元から少しだけ見える半衿は、顔周りを明るく見せたり、全体のコーディネートのアクセントになったりするおしゃれのポイントです。
また、袖口(袂:たもと)や振り(袖の下が開いている部分)からも長襦袢がわずかに覗くため、着物との色合わせを楽しむこともできます。フォーマルな場では白の半衿が基本ですが、カジュアルな着物では色柄物の半衿で個性を演出することも可能です。
二部式襦袢と長襦袢の違い
長襦袢には、上下が分かれた「二部式襦袢」もあります。上半身部分(半襦袢)と下半身部分(裾除け)に分かれており、着丈の調節がしやすいのがメリットです。特に初心者の方や、身長に合わせて長襦袢を選ぶのが難しい場合に便利です。ただし、着姿の美しさや正式さでは、一体型の長襦袢の方が優れているとされることが多いです。
補正具(必要に応じて)
着物は体の凹凸が少ない方が美しく着こなせます。そのため、体型によっては、タオルや専用の補正パッドなどを使って、ウエスト周りや胸元、ヒップの上などを補正する必要があります。
タオルや専用パッドで体型を補正する理由
補正の目的は、体のラインをなだらかな筒型に近づけることです。ウエストのくびれや胸のふくらみを補正材で埋めることで、着物を着たときにシワができにくくなり、帯も安定して締めやすくなります。
美しい着姿のためだけでなく、着崩れを防ぐためにも補正は重要です。ただし、補正のしすぎは苦しくなったり、太って見えたりする原因にもなるため、自分の体型に合わせた適切な補正を心がけましょう。
着物の下に着るものの選び方|素材・季節・TPO
着物の下に着る肌着や長襦袢は、様々な種類があります。どれを選べば良いか迷うかもしれませんが、「素材」「季節」「TPO(着物を着る場面)」の3つのポイントで選ぶと失敗が少なくなります。
素材で選ぶ
肌に直接触れる肌着は、素材によって着心地や機能性が大きく異なります。代表的な素材の特徴を知っておきましょう。
- 綿(コットン):吸湿性に優れ、肌に優しい
最も一般的で、肌襦袢や裾除けの腰布部分によく使われる素材です。吸湿性・通気性に優れており、肌触りが柔らかく、肌への刺激が少ないのが特徴です。ガーゼ素材のものも多く、汗をしっかり吸い取ってくれます。自宅で洗濯できるものがほとんどで、お手入れが簡単なのも嬉しいポイントです。 - 麻:夏に最適、通気性が良い
麻(リネンやラミーなど)は、吸湿性・放湿性、通気性に非常に優れており、熱を逃がしやすい性質があります。そのため、夏の肌着や長襦袢の素材として最適です。シャリ感のある独特の肌触りで、汗をかいても肌に張り付きにくく、涼しく過ごせます。ただし、シワになりやすいというデメリットもあります。 - ポリエステル:洗濯しやすく手入れが簡単
ポリエステルは、丈夫でシワになりにくく、自宅で気軽に洗濯できるのが最大のメリットです。乾きも早いため、お手入れの手間がかかりません。比較的安価なものが多いのも魅力です。ただし、吸湿性は天然素材に劣り、静電気が起きやすいというデメリットもあります。長襦袢にも多く使われています。 - キュプラなど化繊:滑りが良く静電気が起きにくい
キュプラ(ベンベルグなど)は、レーヨンの一種で、シルクのような滑らかな肌触りと光沢が特徴です。吸湿性・放湿性にも優れており、静電気が起きにくい性質があるため、裾除けの素材としてよく用いられます。着物の裾さばきを良くしてくれます。
季節に合わせて選ぶ
着物と同様に、肌着や長襦袢も季節に合わせて素材や仕立てを変えることで、より快適に過ごすことができます。
夏(絽・紗など薄物):麻素材や接触冷感素材の肌着、絽の長襦袢
気温と湿度が高い夏場は、汗対策と涼しさが最優先です。肌着は、吸汗速乾性に優れた麻素材や、接触冷感機能のある化学繊維(ポリエステルなど)のものがおすすめです。脇汗パッドが付いているものや、背中の汗を吸い取るデザインのものも便利です。長襦袢も、絽(ろ)や紗(しゃ)といった透け感のある夏用の生地や、麻素材のものを選びましょう。
冬(袷):保温性の高い素材、重ね着の工夫
冬場は、保温性を重視した肌着選びが大切です。綿素材の中でも、ネルやガーゼなど、少し厚手で起毛感のあるものが暖かく感じられます。保温機能のある化学繊維の肌着(ヒートテックなど)を活用するのも良いですが、着物から見えないように注意が必要です。
長襦袢は袷(あわせ)用のものを選び、寒さが厳しい場合は、和装用のインナー(七分袖など)を重ね着したり、足元にレギンスやステテコを履いたりするなどの工夫もできます。
春秋(袷・単衣):基本的な綿素材や通年素材
比較的過ごしやすい春や秋は、基本的な綿素材の肌着や、通年使えるポリエステル素材のものが活躍します。暑さ寒さに合わせて、肌着の種類を調整しましょう。単衣の時期(6月・9月)は、気温に応じて夏用の肌着や単衣用の長襦袢を選ぶと快適です。
TPO(着物の種類)に合わせて選ぶ
着用する着物の格や場面によっても、ふさわしい下着の選び方は異なります。
フォーマル(留袖・振袖・訪問着など):白の長襦袢が基本、礼装用の肌着
結婚式や式典など、フォーマルな場面で着用する留袖、振袖、訪問着、色無地(紋付)などの下には、白無地の長襦袢を合わせるのが基本中の基本です。半衿も必ず白を選びます。肌着も、透けたり響いたりしないよう、白や淡い色のシンプルなデザインのものを選びましょう。礼装用に、衿ぐりが深めに開いている肌襦袢などもあります。
カジュアル(小紋・紬など):色柄物の長襦袢でおしゃれを楽しむことも
普段のお出かけや観劇などで着用する小紋や紬などのカジュアルな着物の場合は、長襦袢の色や柄で個性を演出する楽しみがあります。着物の色柄に合わせて、淡い色やぼかし染め、おしゃれな柄物の長襦袢を選んでコーディネートを楽しむことができます。半衿も、白だけでなく色物や刺繍入りのものなどを合わせることが可能です。肌着は、快適性や機能性を重視して選んで問題ありません。
着付けの順番:下着から着物まで
着物を着る際は、正しい順番で下着を身につけていくことが、美しい着姿と着崩れ防止につながります。基本的な順番を確認しておきましょう。
- 足袋を履く
まず最初に、清潔な白足袋を履きます。着付けの途中で履くのは大変なので、最初に履いておくのがおすすめです。 - 和装ブラジャーをつける
洋服用のブラジャーは外し、和装ブラジャーをつけます。胸のふくらみを抑え、なだらかなラインを作ります。 - 肌襦袢・裾除け(または和装スリップ)を着る
肌襦袢を着て、その上から裾除けを腰に巻き付けます。和装スリップの場合は、一枚で着用します。 - 補正をする(必要な場合)
体型に合わせて、タオルや補正パッドを使ってウエスト周りなどを補正します。着物を着たときにシワができやすい部分や、帯が安定しない部分を埋めるように補正します。 - 長襦袢を着る(半衿・衿芯を確認)
長襦袢を羽織り、衿元を合わせます。この時、長襦袢に半衿がきちんと縫い付けられているか、衿の中に衿芯が入っているかを確認しましょう。衿芯を入れることで、衿元が美しく決まります。 - 着物を着る
長襦袢の上から着物を羽織り、裾の長さや衿元を合わせ、腰紐などで固定していきます。 - 帯を結ぶ
最後に帯を結んで完成です。
着物の下着に関するQ&A
着物の下着に関して、よくある疑問にお答えします。
Q. 洋服のキャミソールやTシャツでは代用できませんか?
A. あまりおすすめできません。キャミソールは汗取りとしては不十分な場合が多く、Tシャツは衿元や袖口から見えてしまう可能性が高いです。また、洋服用のインナーは着物の着姿を美しく見せるための補正効果は期待できません。やはり、和装専用の肌着を着用するのがおすすめです。
Q. 冬場、ヒートテックなどを着ても良いですか?
A. 防寒対策として着用するのは問題ありませんが、注意が必要です。衿元(特に後ろの衣紋を抜いた部分)や袖口、裾から見えないように、衿ぐりが広く開いたもの、袖丈や着丈が短いものを選びましょう。七分袖やUネック、バレエネックなどがおすすめです。着物の中で熱がこもりすぎることもあるので、脱ぎ着できない分、暖房の効いた室内での体温調節も考慮しましょう。
Q. ショーツは普段のもので大丈夫?
A. 基本的には普段着用しているもので構いません。ただし、着物や帯にラインが響かないように、シームレスタイプやローライズタイプ、 Tバックなどを選ぶとより安心です。色は白やベージュなど、透けにくいものがおすすめです。
Q. 和装ブラジャーは必ず必要ですか?
A. 必ずしも必須ではありませんが、着用した方が胸元のラインがすっきりとし、着姿が格段に美しくなります。特に胸の豊かな方は、帯の上に胸が乗ってしまうのを防ぐためにも着用をおすすめします。スポーツブラやノンワイヤーブラで代用する方法もありますが、和装ブラジャーの方が胸を潰してなだらかにする効果が高いです。
まとめ:適切な下着選びで、もっと美しく快適に着物ライフを
着物の下に着る肌着や長襦袢は、単なる下着ではなく、着物を美しく着こなし、汚れから守り、快適に過ごすための重要なアイテムです。それぞれの役割を理解し、素材や季節、TPOに合わせて適切なものを選ぶことで、着物姿がより一層引き立ちます。
最初は種類が多くて戸惑うかもしれませんが、基本的なアイテムから揃えていけば大丈夫です。もし選び方に迷ったら、呉服店などで相談してみるのも良いでしょう。
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