記事公開日:
着物のシミ抜き完全マニュアル!自分でできる対処法と専門店に頼むべき基準とは

お食事中やお出かけ先で、大切な着物にうっかりシミをつけてしまった……。
そんな時「どうしよう!」と焦ってパニックになってしまう方は多いはずです。
着物のシミ抜きは、初動の対応がその後の仕上がりを大きく左右します。しかし、慌てて自己流でこすったり、間違った処置をしてしまうと、かえってシミが広がり取り返しのつかない状態になることも。
この記事では、シミがついたときの「絶対にやってはいけないNG行動」から、自宅でできる応急処置、そして「プロの専門店に任せるべき基準」や料金相場までを徹底解説します。
1. 着物のシミ抜きを自宅で行う前の基本と注意点
シミをつけてしまった時、まずは落ち着いて以下の基本ルールを確認してください。間違った処置は着物の寿命を縮めてしまいます。

シミがついたら「こすらず、すぐ吸い取る」が鉄則
着物のお手入れで最も重要なのは「絶対にこすらない」ことです。濡らしたおしぼりやハンカチでゴシゴシと拭くと、着物の生地が毛羽立ち、白く色抜けする「スレ」という現象が起きてしまいます。シミがついたら、まずは乾いた清潔なハンカチやティッシュを優しく押し当て、水分や油分を「吸い取る」だけに留めましょう。
正絹(シルク)や金銀箔・刺繍入りはセルフケアNG!
ご自宅でシミ抜きに挑戦できるのは、ポリエステルや木綿などの「洗える着物」のみと考えてください。生地の織り方にもよりますが、正絹は水に濡れると縮みやすく、輪染み(輪郭が残るシミ)になりやすいデリケートな素材です。また、金糸・銀糸の刺繍や金箔があしらわれている部分は、素人が触ると剥がれたりほつれたりするため、セルフケアは絶対に避けましょう。
【絶対にNG】お湯の使用や水分過多はシミを悪化させる
「お湯の方が汚れが落ちそう」と思うかもしれませんが、正絹にお湯やぬるま湯を使うと生地が激しく収縮したり色落ちする可能性が高く、血液や汗などのタンパク質汚れはお湯に触れると固まってしまい、繊維の奥に定着してしまいます。また、水分をたっぷり含ませて洗うと、乾いた時に大きな水染みとなって残ってしまうため大変危険です。
2. 【汚れの原因別】自宅でできる着物のシミ抜き手順
ここでは正絹の着物についたシミや、汚れの種類に応じた基本的な対処法をご紹介しますが、慣れていない方はご自身で行うことはお勧めしません。※もし作業を行う際は、必ず着物の下に不要なタオルを敷き、上からトントンと叩いて下のタオルに汚れを移すイメージで行ってください。
ファンデーションや口紅などの「油溶性の汚れ」
油分の多い汚れには「ベンジン」を使用します。換気の良い場所で、ガーゼや不要な布にベンジンを含ませ、シミの上から軽くトントンと叩きます。こすらずに下のタオルへ汚れを押し出すのがコツです。ベンジンは輪ジミになりやすいため、周囲をぼかすように叩くのがポイントです。
醤油やジュースなどの「水溶性の汚れ」
薄めた中性洗剤(食器用洗剤など)を綿棒やガーゼに少しだけ含ませ、トントンと叩いて汚れを浮かせます。その後、水で固く絞った布で洗剤成分をしっかりと叩き出し、最後に乾いたタオルで水分を完全に吸い取ります。
血液や汗などの「タンパク質・汗の汚れ」
お湯は絶対に使わず、必ず「水」を使用します。霧吹きで軽く水を吹きかけるか、水を含ませた布でトントンと叩いて汚れを落とします。時間が経つと黄ばみになるため、着用後はすぐに対処することが重要です。
泥やガムなどの「不溶性・その他の汚れ」
泥はねは、濡れている状態で触ると繊維の奥に入り込んでしまいます。まずは「完全に乾かす」のが鉄則です。乾いた後に、柔らかいブラシなどで優しく泥を払い落とします。ガムがついた場合は、氷を入れたビニール袋を当てて冷やし固め、ポロっと剥がす方法がありますが、生地を傷めるリスクが高いためプロに任せるのが無難です。
3. 自宅では落とせない「頑固なシミや黄変」は専門店へ相談
以下のような状態の着物は、どんなに頑張っても自宅では落とせません。無理をせず、すぐに着物専門のクリーニング店へ相談してください。
時間が経って酸化した「黄ばみ・古いシミ」はセルフケア不可
「久しぶりにタンスから出したら、茶色いシミ(黄変)ができていた」という経験はありませんか?これは、落としきれなかった汗や汚れが数年かけて酸化したものです。ベンジンや洗剤では絶対に落ちず、プロによる「漂白」と、抜けた色を足す「色掛け」という高度な職人技が必要になります。
カビのニオイがする場合やデリケートな着物もプロへ
カビが発生している着物は、生地そのものが弱くなっている可能性があります。また、天然染料(藍染など)が使われた着物は色落ちしやすいため、素人が薬剤を使うと一瞬で色が抜けてしまいます。少しでも不安を感じたら、自己判断は禁物です。
4. 着物のシミ抜き・手入れにかかる費用と専門店の選び方
「プロに頼むと高そう…」と不安な方へ、費用の目安と失敗しないお店選びのコツをお伝えします。

部分シミ抜き・丸洗い・洗い張りの料金目安
- 部分的なシミ抜き: シミの大きさや古さによりますが、500円玉サイズで 2,000円〜5,000円程度。黄変(古い茶色いシミ)の修復は 10,000円以上かかることもあります。
- 丸洗い(全体のドライクリーニング): 5,000円〜10,000円程度(全体的な軽い皮脂汚れやくすみに有効)。
- 洗い張り(着物を解いて水洗い): 10,000円〜20,000円程度(※別途、仕立て代がかかります)。
大事な着物を傷つけない!シミ抜きを頼むお店の選び方
着物のシミ抜きは、洋服のクリーニングとは全く異なる技術です。選ぶ際は「着物専門のお手入れ(悉皆・しっかい)」を行っているか、また、作業前にしっかりと着物の状態をチェックし「事前の無料見積もり」を出してくれるお店を選びましょう。「思っていたより高額な請求をされた」というトラブルを防ぐことができます。
5. シミ抜き後の美しさを保つ!着物の正しい保管とお手入れ方法
シミ抜きをして綺麗になった着物は、正しい環境で保管することで、新たなシミやカビを防ぐことができます。

湿気を防ぐ「桐箪笥(きりだんす)」や通気性の良い保管ケースの活用
着物の大敵は「湿気」です。調湿作用に優れた桐箪笥での保管がベストですが、難しい場合は着物専用の保管袋(調湿機能付き)を利用しましょう。クリーニングから戻ってきた際の「ビニール袋」は必ず外し、新しくて清潔な和紙の「たとう紙」に包んで保管してください。
防虫剤の正しい使い方と年に1〜2回の「虫干し(陰干し)」
防虫剤を入れる場合は、必ず「和服専用」のものを選び、1種類のみを使用します(複数を混ぜると化学反応でシミの原因になります)。また、空気が乾燥する秋晴れの日に、タンスから着物を出して室内の風通しの良い場所に掛けておく「虫干し(陰干し)」を行うことで、カビや黄ばみの発生をぐっと抑えられます。
6. まとめ
着物にシミがついてしまった時のポイントをまとめます。
- 絶対にこすらない、濡らしたおしぼりで拭かない。(ティッシュで優しく吸い取るのみ)
- 正絹や高級な着物は、自分で触らずすぐにプロへ任せる。
- 古い黄ばみやカビは、専門技術(漂白・色掛け)が必要。
「このシミ、落ちるかな?」「着物がダメになってしまうかも」と不安に思ったら、被害が広がる前に着物お手入れのプロに相談するのが一番の近道です。適切な処置をして、思い出の詰まった着物を長く美しく楽しみましょう。
▼着物のシミ抜き・黄変直しのご相談は鈴花へ
鈴花(SUZUHANA)お直し・お手入れのご案内
ライター紹介






