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浴衣と着物は何か違う?歴史や着用シーン、素材や生地、身に着けるものの違いを解説

「浴衣と着物って何が違うの?」という素朴な疑問を持ったことはありませんか?
日本の伝統衣装として親しまれているこの二つは、一見似ているようで実は大きな違いがあります。
近年は和装への関心が再び高まっており、季節の行事や特別なイベントで浴衣や着物を楽しむ機会が増加傾向にあります。
一方で、「いつどちらを着れば良いのかわからない」「素材や着付けが違うと聞くけどよくわからない」と感じる方も少なくありません。
そこで、この記事では、浴衣と着物の違いを歴史、素材、着用シーン、着こなしまでわかりやすく解説します。
浴衣と着物の歴史
浴衣と着物は、どちらも日本の伝統的な衣装として広く知られていますが、その歴史をたどると起源や役割に明確な違いがあります。
着物のルーツと進化
「着物」とは、もともと「着るもの」全般を指す言葉でしたが、時代が進むにつれて現在のようなかたちに定着していきます。
現在の「着物」が指す服装の原型となったのは、平安時代の下着であった「小袖(こそで)」だったといわれています。小袖の上に、紅の袴、単、袿などを重ねて着る「十二単」が当時の服装でした。
これが後に実用的な服装へ変化する中で、江戸時代に現在の「着物+帯」のかたちになったといわれています。
浴衣のルーツは「湯帷子(ゆかたびら)」
浴衣の起源も平安時代にさかのぼります。
当時の貴族たちは蒸し風呂に入る際、汗を吸収するための麻の単衣(ひとえ)の衣である「湯帷子」を着ていました。これが浴衣の始まりとされ、江戸時代に入ると庶民の間にも広まり、湯上り後のくつろぎ着として使われるようになります。
やがて素材が木綿へと変わり、通気性と肌触りの良さが評価され、次第に日常着や夏の外出着としても着用されるようになりました。
現代では、夏祭りや花火大会といったイベントで、浴衣はカジュアルな和装として親しまれています。
浴衣と着物の着用する時期・シーンの違い
今度は、浴衣と着物の違いを、着用する時期やシーンから紐解いてみましょう。
浴衣は「夏限定」のカジュアルウェア
浴衣は「浴衣のルーツは「湯帷子(ゆかたびら)」でご紹介した通り、「湯上りに着る衣」という意味から派生した衣装で、現代においては主に夏場に着用されるのが一般的です。
特に7~8月に開催される夏祭りや花火大会、地域の盆踊りなどのイベントで見かける機会が多くなります。
また、旅館や温泉宿などでも部屋着として浴衣が提供されるように、リラックスした場面や非公式なシーンでの着用に適しています。
風通しがよく涼しい素材で作られているため、夏の暑さを和らげる実用性も兼ね備えています。
着物は「一年を通じて」さまざまな場面で活躍
一方、着物は春夏秋冬を通じて着用される正式な和装であり、素材や裏地の有無によって季節に応じた着こなしが可能です。
たとえば、裏地のない単衣(ひとえ)は初夏や初秋に、裏地のある袷(あわせ)は秋から春にかけて着用されます。
また、盛夏には「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」といった透け感のある生地を用いた夏用着物が選ばれます。
着物は冠婚葬祭や入学式、成人式、七五三、初詣といった正式なシーンでの着用が一般的です。
さらに、茶道や華道などの伝統文化に携わる場、観劇など趣味の時間、格式の高いレストランでの食事にもふさわしい装いとされています。
浴衣と着物の素材や生地の違い
一見すると似たように見える浴衣と着物ですが、実は素材や生地にも明確な違いがあります。
浴衣の素材は「涼しさ」と「軽さ」が重視される
浴衣は基本的に夏に着用される衣装であるため、通気性が高く、汗を吸収しやすい素材が用いられます。
代表的な素材としては「綿」や「綿麻(めんあさ)」が挙げられます。
これらは肌にやさしく、風通しが良いため、猛暑の中でも快適に過ごせるのが特徴です。
近年では、シワになりにくく洗濯しやすい「ポリエステル素材」の浴衣も人気があります。
手入れが簡単で繰り返し着用できるため、ファッション性と実用性のバランスを重視する層には魅力的です。
着物は「格式」と「季節感」に応じて素材が変わる
着物はシーンの格式や季節に応じて選ぶべき素材が異なります。
最も格式が高いとされるのは「正絹(しょうけん)」と呼ばれる絹100%の素材で、しなやかな光沢と上品な質感が魅力です。フォーマルな場面ではこの正絹が多く用いられます。
そのほか、日常着として用いられる「ウール」や「木綿」の着物もあります。
秋冬に向いているウールは保温性に優れ、カジュアルな外出着として親しまれています。
一方、木綿の着物は洗いやすく、家庭での着用にも適していることから、主婦などにも人気があります。
夏場には透け感のある「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」といった素材の着物が登場し、見た目にも涼しげな装いを演出します。
浴衣と着物の着方や身に着けるものの違い
浴衣と着物は見た目が似ているだけでなく、着方も一見すると共通しているように感じられます。
しかし実際には、着用時に必要なアイテムや所作にいくつかの明確な違いがあります。
ここでは、「襦袢」「帯」「足元」の3つの観点から、その違いを整理してみます。
襦袢

着物を着る際には、直接肌に触れることを避けるために「襦袢(じゅばん)」という下着を着用するのが基本です。
襦袢は汗を吸収して着物本体を汚れから守る役割を果たすほか、首元から少しだけ見える白い半襟が、着姿をより上品に見せるアクセントにもなります。
一方、浴衣は基本的に肌に直接着ることが前提のため、襦袢は不要です。
素肌に一枚でさらっと羽織れるのが魅力で、涼しさや手軽さを重視した装いとして親しまれています。
ただし、肌の透けが気になる場合や汗対策をしたい場合には、「浴衣用インナー」などを活用するのも良いでしょう。
帯

着物に合わせる帯は、格式に応じて「袋帯」「名古屋帯」「半幅帯」など複数の種類があり、それぞれに応じた結び方が求められます。
帯自体の幅や長さも浴衣用より長く、硬さもあるため、着付けには一定の技術が必要です。
フォーマルな場では特に帯の格が重視され、全体のコーディネートの中で非常に大きな存在感を放ちます。
一方で浴衣に用いる帯は、主に「半幅帯」や「兵児帯(へこおび)」などが一般的です。
柔らかく、初心者でも比較的、簡単に結べるため、和装初心者にも扱いやすいというメリットがあります。
また、結び方も自由度が高く、個性を表現しやすいのが特徴です。
足元



足元のスタイルも、浴衣と着物で大きく異なるポイントです。
浴衣を着る際は、素足に下駄を履くのが基本スタイルです。
涼しげな足元で、夏らしいカジュアルな印象を与えます。
下駄のカラカラとした音も、季節感を演出する風情の一つとされています。
一方、着物の場合は「足袋(たび)」を履くのがマナーとされます。
足袋は白が基本で、礼装には欠かせないアイテムです。
足元には「草履(ぞうり)」を合わせるのが一般的で、こちらもTPOや着物の格式に合わせて選びます。
特に式典や正式な場では、足元まで抜かりなく整えることが礼儀とされています。
まとめ
浴衣と着物は、どちらも日本の伝統文化を象徴する美しい装いですが、その成り立ちや着用の目的、着方や身に着ける小物に至るまで、さまざまな違いがあります。
浴衣は、もともと湯上りに着る簡素な衣として発展し、現代では夏のイベントやくつろぎの場で活躍するカジュアルな和装として親しまれています。
軽やかな素材と手軽な着付けが魅力で、初めての和装体験にもおすすめです。
一方の着物は、季節やシーンに応じた豊富なバリエーションがあります。
素材や帯、足元に至るまでの装いに意味が込められ、冠婚葬祭や文化行事などの正式な場にふさわしい、気品あるスタイルが特徴です。
浴衣と着物、それぞれの違いを正しく理解すれば、和装をより深く楽しむことができます。
TPOに応じて選ぶだけでなく、素材やデザインにこだわることで、自分らしい装いを表現できるでしょう。
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ライター紹介

濵田唯
きものブランド「キモノイキモノ展 」スタイリストの濵田唯です。
季節に合わせたおしゃれなコーデを提案♪和服で自分らしさを楽しむヒントや、日常に取り入れるアイデアをお届けします!